産後一ヶ月が経つと出産した時が遠い過去のように思うのは、毎日坊の面会に病院に通ってるからかもしれない。
1日があっという間に過ぎて行くので、出産したことがまるで数年前かのような感覚になりつつある。
そんなわけで帝王切開翌日のお話です。
意識朦朧の朝
続けての睡眠はできず、そのまま朝を迎えた…
朝一に血圧、傷口のチェック、悪露の確認、子宮の戻りの確認でお腹押されるも激痛。
痛み止めがあって痛いのだから、切れたときは雄叫びをあげるくらい痛いのだろう。
水を飲むことは許される。
絶飲だったのでペットボトルを一気に飲み干した。
ガスや便は出ない。痛すぎてうん○なんて出せやしない。
そうこうして尿道の管が外れる。
これがなくなるだけで、結構スッキリする。
トイレに行くときは、ナースコールして付き添ってもらうのが必須。
術後1日目なんて痛すぎて、全ての行動がスローモーション。
まず起き上がれない、横になれない、一つの動きさえも痛くて時間がかかる。
トイレに行って排尿してもこれまた激痛。
ビクビクしながらとオシッコを出す。
拭くことさえも体がよじれるだけで激痛。
「あーこれ。この痛み2回目だわ」なんて思い出しながらトイレをすませる。
またナースコールを押しベッドまで付き添ってもらう。
今日のスケジュールを説明されるが、腰の痛み止めの影響で眠気がハンパない。
説明中も朦朧として、眠いのに寝れないと言う拷問。
拷問のような搾乳地獄
母乳の指導が始まる。
自動搾乳機の説明を聞いても、痛み止めの影響で全然頭に入ってこない。
胸自体は張りもなければ特に変化は見られないが、もうこの時から乳首のマッサージが始まる。
マッサージなんて優しい響きじゃない。これはなかなかの拷問…激痛…
乳首をひだすらつまみ出される。
痛すぎて声が出るし胸が引っ込みそうだ。
今は絞り出しても何も出ない。
まずは乳首、乳輪を柔らかくして開通させることから始まる。
私のパイは固かったらしいのでひたすらつまみつねりあげる。
クソ痛い。つい悲鳴をあげてしまう…拷問だ。
でも、このあとこの我慢が母乳の出に影響することを体感する。
今日はここまで的な感じが3時間おきにやってくるが、いつまでも手絞りは時間がかかるので、自動搾乳機で開通させていく。
とにかく15分間、搾乳機で乳首を引っ張られる。
乳はまだ出ない。
そしてまた変な気分になる。
乳首がまだ赤ちゃん仕様になってないからだ。
これは変な気分にならず、ちゃんと赤ちゃん仕様になるのか不安になった。
そもそも出るのかも不安だし。
これの繰り返しだ。
NICUでの息子と初対面
午前中に夫がやってきて入院道具を持ってきてくれた。
これでパジャマになれて歯が磨けて後日シャワーができる。
NICUの面会時間は決まっているので、車椅子に乗って夫と見にいく。
もちろん痛み止めでぶりんぶりんにぼーっとしている中での面会。
でも、息子に会える気持ちはドキドキと不安で心臓はバクバク。
病室からNICUまでは迷路のような道のりのように長く感じた。
そしてNICUに入るときは厳重に何重のゲートもある。
インターホンを押して名前を伝えて開けてもらう。
さらに次のゲートで名前を言う。
そしてもう一枚のゲートは専用のカードキーがないと開かないのでナースに開けてもらう。
NICUは5年ぶりだ。あのアラーム音が鳴り響くと、思い出す…
ぼーっとしてた意識が吹っ飛び緊張感が走る。
少し怖くなったり力が入ってしまうのは完全にトラウマだ。
一気にメンタルがナーバスになっていく。
完璧にPTSDだと思ってる。
先には全患者のモニターが見える。満床だった。
夫に車椅子で押してもらいここが息子のベッドだよと教えてもらう。
産後初めて見る息子の無事を確認した。
モニターのアラーム音にビクつきながら心拍、サチュレーションが表示されていた。
この時のサチュレーションは92と95とか低かった記憶があるが、なんの表示なのかその時は知る由もなかった。
只々、息子の呼吸を見て、生きてる。息してる。
それを見て安心した。
そして思っていたより大きかったというのが最初の印象だった。
小さいは小さいけど長男の時のこと思い出して、彼は22週だったからもっと小さかった。
けどたくさんの管が繋がってる。
手の甲に細い管が数本入ってる。
ベッドに並べて点滴の本数が4、5本並べてある。
酸素吸入のホースも取り付けられてる。
仰向けで呼吸がベコベコしてる。
苦しそうにも見えるけど、表情は意外と穏やかで眠っている。
早く産んでしまったことへの思いが込み上げてきて涙を我慢した。
正直大丈夫なのだろうか。
夫は昨日の状態を見ているから、その時からの状態比較を説明してくれるが頭に記憶が残らない。
NICUの規則は厳しく感染予防のため幾つも決まりごとがある。
・長髪はまとめてマスクは必須
・精密機械があるので携帯はフライトモード
・携帯もウェットシートで除菌
・手洗い後に触る前にアルコール消毒
・クベースという保育器に入ってるので、扉を開ける際は肘で開ける
・息子を触る際は必ずアルコール消毒
・髪を触ったり何かを触ったら必ずアルコール消毒
全てを一通り終えて出産後に頭を触った以来息子を改めて触る。
小さくて壊れてしまいそうなか弱い姿。
どう触っていいか戸惑う。
管だらけでどこを触っていいのか。
小さすぎてオムツが大きくて手足は短く小さくてどこを触っていいのか。
さすさす恐々と足を触って見る。
するとナースからこの時期の赤ちゃんはまだお腹の中で子宮に守られてる状態だから丸まってることが落ち着くと説明される。
触るときもさすったりではなくでホールディングと言ってぎゅっと丸めてあげると落ち着くと言われた。
今にも壊れそうな感覚なのでどうホールディングしていいのか、触り方に慣れ始めたのは3日位はかかったと思う。
何するにしても自分の呼吸は忘れていた。
一行動終わる度にハアハアと呼吸を思い出すくらい。
クベース内は保温されてるので私は汗だく。
NICU担当医師の説明
担当医が説明しにくる。
研修医のような若手の医師を連れてきて、担当医は手術時に挨拶した程度だったが顔を見て思い出した。
しっかりした顔立ちで濃ゆい。
コウノドリに出て来そうなキャラだなと思いながら。
まず生まれた重さがどの分類に属されるか説明を受け、1500g以下の場合は極低体重児に分類される。
しかし息子は1730gで生まれて週数的に大きく低体重児に属するという。
ただ体重が大きいことがいい訳ではなく重さより週数が大事らしい。
長くお腹の中にいる方が赤ちゃんの成長には大事なのだ。
そりゃそうだよな。とまた自責の念に駆られる。
妊娠糖尿病だったので低血糖はあったのか尋ねるとそれはないと言われた。
大きさも個人差があるが、範囲内の体重なので、特に問題はなし。
肺の発達がまだ未熟だから発達を促す薬を入れてるとか、暴れてしまうので手を拘束して眠る薬を入れて落ち着かせているとか、淡々と説明をされてるがほとんどの説明を覚えてない。
ただ今急を要する致命的な疾患に陥っている訳ではなく、落ち着いてるのでこのまま様子を見ていくということだけは聞いて安堵した記憶がある。
ホッとして改めて息子をまじまじ見て見る。
皮膚も透き通ってるんじゃなくてとても毛むくじゃら。
お猿さんのようなゴリラのような。
野生気溢れる体毛。
髪の毛もフサフサ。筋肉質。ただミニチュアサイズの人間だ。
長男は透き通ってて骨が透けて見えるんじゃないかと思った。
産後1日目の息子はまだ拘束バンドで手を縛られており、口から胃管の管が入ってる。
胸には心拍を測るパッドが付いてて、腕には点滴の管が通ってる。
採血のために足のかかとから採取するそうで、足裏は鬱血して穴ぼこだらけ…なんとも痛々しい姿で申し訳ない気持ちになった。
無事は無事だが30週4日と週数的には大分あるけど、72時間は変化しやすいので注意深く様子を見る。
それを乗り越えたら次は一週間。
ここから緊張のカウントが始まった。